Stones
Hayamana Inn
CUSTOM
BOARDS
「アメリカの成人男性の平均体重は87キロ、日本人は64キロ。それなのにボードのサイズや厚みが同じなのはなぜだろう?」「決して安い買い物ではないのに、どうして色やデザインを選べないんだろう?」疑問に思った発想は至ってシンプル。でもそのシンプルな発想を実現させるための裏には、コンピューターに制御された高性能デジタルマシンの「最先端技術」と、長い年月を経て身に付けた職人の「巧」の融合が必要でした。そして誕生したのが日本人のため、ひとりひとりのためのフルカスタムのスタンドアップ・ボードです。
もちろん自分に最適なフルカスタムのボードがあれば、それに越したことはない。シンプルに誰でもそう思うに違いありません。でもそれがなかなかスタンドアップのボード製作に反映されなかった理由が三つあります。
一つ目はそれほどスタンドアップのボードに対する需要が少なかったからでしょう。しかし、年々海の上でのスタンドアップパドラーが増えて行く過程で自然に解消されていきました。
二つ目はスタンドアップに適した「フォーム」と呼ばれるボードの素材がなかったからです。もちろん海外には存在しましたが、日本に輸入すると高価になってしまうことや、あらゆる幅や長さや厚みのフォームを在庫するには無駄が多かったのでしょう。そこで国内で造ることになりました。「フォームを造る」と言うと単純作業のように思えてしまいますが、まったくそんなことはありません。強度はもちろんのこと、反りや捻れといった僅かな狂いが、最後の仕上げに大きく影響してきます。つまり料理と同じこと。素材が悪ければ、どんな一流シェフもおいしい料理は作れないのです。予想より遥かに長い月日が経過った後、完璧なフォームは完成しました。
三つ目はとても重大でした。ただ単に波にのるだけなら、サーフボードの技術とデータで製作するだけでいいのですが、サーフボードとスタンドアップのボードには、大きな違いが存在していたのです。それは、スタンドアップは名のごとく、ボード上に立つスポーツです。いくら波に乗って調子がよくても、立って漕ぐことができないボードは無用のものになってしまいます。これには長い経験を持つボード職人も頭を抱えてしまいました。今までの数多くの彼らのデータには「立って漕ぐ」という要素が含まれていなかったからです。
その解決の糸口になったのが、コンピューター制御の最新技術でした。オーダーが入るとまず最初に始めることは、その人が使っているボードのデータを計測し、コンピューターへ入力することです。そしてすべての数値を基にスクリーン上で3D化します。そうすることでボードの幅や厚みだけではなく、曲線はもとより容積も算出されることになります。容積がわかれば、そのオーダーした人がボードの上に立つための長さや幅、厚みが分かってきます。「これ以上短く、薄くしたらこの人はボードの立てない」という致命的になる情報が予め分かるのです。そして、その設計図をもとに最先端技術のマシンが素材の無駄な部分を削り落とし、最後に「命」をボードへ注ぎ込む職人の手に渡ります。
「ボードの上に立つ」という要素から解放されると、もはやボード職人の独壇場。やがてそのボードはオーダー通りの色に塗られ、仕上げられて「世界で一つしかない宝物」としてユーザーの手に渡るのです。